低髄液圧症候群の詳細を知るには、まずは脳と髄液の関係について簡単に知っておく必要があります。脳および脊髄は、硬膜という袋のようなもので覆われています。したがって、硬膜は透明の髄液で満たされているので、位置的にはその中の脳や脊髄が存在していると言えます。この髄液は通常一定の量であり、また脳の位置を安定させています。
交通事故などの激しい刺激が硬膜に伝わると、膜が破れて髄液が漏れてしまい、頭痛やめまいなどの体調不良を引き起こし、これを基本的には低髄液圧症候群、あるいは最近では脳脊髄液減少症とも呼ばれます。むち打ち症と同じような症候が出るため、低髄液圧症候群と判明する前に、単にむち打ち症と診断されることが多く、後々改めて検査すると髄液が漏れていたということも少なくありません。
髄液が漏れたと聞くと、大変なことを想像してしまいますが、極初期の場合には、水分補給をしながらしばらく安静にしておけば治癒するものなので、特に交通事故などに遭遇した場合には、脳のCTやMRIなども行ってもらうようにしましょう。髄液の減少が続く場合には、ブラッドパッチと呼ばれる治療法を実施することが多いです。ブラッドパッチとは、血が固まる性質を利用したもので、硬膜に血液を注入することによってそれが広がるように硬膜を満たし、それがやがて固まることによって、硬膜の穴を塞いで髄液の減少を食い止めます。
交通事故や転んで頭を打った場合には、低髄液圧症候群も疑うようにしましょう。特に、しばらく経っても頭痛が治まらなかったり、立つとめまいなどが起きたりする場合には、必ず脳の検査へ訪れるようにしましょう。早めの対策により、完治も早くなります。